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第十話 雨と涙

last update Última actualización: 2025-11-07 08:00:45

眠り続ける麻美の瞼から涙が滲んでいる。ゆっくりと枕に浸透しようとしている宝石は、彼女の感情の残骸だ。自分でも気付かない想いを滲ませながら、夢幻楼は現実へと入り込み、一つに混ざるように溶けていく。

そんな彼女の姿を思い起こしながらため息を吐く父、晴明がいた。麻美の幸せを考えて生きてきた結果がこれか……彼の呟きはゴールのない迷路へと迷走していく。終夜に事実を伝えるかどうかを悩んでいた彼は、未だに口を閉ざす事しか出来ない。

いつかは表面化されてしまう物事に怯えながら、彼の気持ちとは裏腹に時間だけが過ぎていった。

「……すまない、麻美」

自分の手元にずっといてほしかった、それが晴明の本音だ。夢と現実は全く違う反対色として存在しながら、彼を苦しめる結果へと書き換えてしまった。自分のミスがなければ、人を信用しなければこの結果にはたどり着かなかっただろう。

「奴は悪魔だ」

誰を指し示す言葉かを濁したまま、ポツリと口にしていく。グルグルと今までの記憶が頭の中で浮き上がり、存在をアピールしていく。過去の事なのに、それらは現実に起こっているように晴明の体から抜け出し、目の前のステージへと広がっていった。

雨は振り続ける。フラフラを前に進むしかなかった晴明は、傘もささずに歩いている。

放心状態の晴明には周囲の光景が霞んで見えた。全ては幻だったのかもしれない。今まで会社を大きくする事で生活を保とうと努力してきた。全ては麻美と妻の為だ。何かを成し遂げる為には犠牲が必要だった。あの時は目の前の光に酔いしれて、崩壊していく現実に気付けなかった。

「どうして俺の気持ちが分からない。お前達の為にーー」

晴明の言葉は妻である光を責めるものばかり。お互いを支え合う昔の二人の姿は見る影もない。言葉は互いの心を傷つける刃へと変貌し、全ての幸せを壊
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